「ウボォーさん、聞こえますか?」
このフレーズを聞いて、背筋がゾクッとしたあなたは相当なジャンプフリークでしょう。あるいは、最近アニメや漫画で『チェンソーマン』にハマり、「あれ?このセリフ、どこかで聞いたことがあるような……」とデジャヴを感じて検索窓を叩いた口かもしれませんね。
実は、このセリフは伝説的な名作『HUNTER×HUNTER』の超名シーン。それがなぜ、令和の怪物作品『チェンソーマン』の文脈でこれほどまでに語られるのか。
今回は、ファンを熱狂させた「金玉蹴り」の真相から、元ネタである幻影旅団団長クロロの鎮魂歌まで、そのつながりを徹底的に深掘りしていきます。
チェンソーマン第38話で描かれた「最悪で最高の弔い」
まず結論からお伝えしましょう。『チェンソーマン』において、この元ネタを彷彿とさせるシーンが登場するのは、コミックス第5巻の第38話「気楽に復讐(リベンジ)!」です。
物語は、特異4課を壊滅状態に追い込んだ宿敵「サムライソード」との決着シーン。ここで、相棒である姫野を失い、心に深い傷を負っていた早川アキが、主人公のデンジにある提案をされます。
それは、「捕まえたサムライソードの股間を交互に蹴り上げ、誰が一番高い声を出せるか競う」という、およそデビルハンターとは思えないほど幼稚で、かつ凄惨な「大会」でした。
アキは最初こそ「公務員だしな……」と躊躇しますが、最終的にはデンジの誘いに乗り、天国にいる(かもしれない)姫野先輩に向けてこう言い放つのです。
「オレ達からアンタへの鎮魂歌(レクイエム)だ」
この瞬間、読者の脳裏にはあの「蜘蛛の頭」の姿が過ぎりました。
元ネタ『HUNTER×HUNTER』クロロの鎮魂歌とは?
ここで一度、時計の針を戻して元ネタを確認してみましょう。
『HUNTER×HUNTER』コミックス第11巻。幻影旅団の団長、クロロ=ルシルフルが、マフィアに殺された仲間のウボォーギンに捧げたのが、本物の「鎮魂歌」でした。
「ウボォーさん、聞こえますか? オレ達からあなたへの鎮魂歌(レクイエム)です」
夜のヨークシンシティを背景に、窓辺に立つクロロが指揮者のように腕を振るう。その合図とともに、旅団のメンバーたちがマフィアの祭典を血の海へと変えていく。この圧倒的なカリスマ性と、冷徹ながらも仲間への愛が狂気として溢れ出したシーンは、漫画史に残る「美しい虐殺」として語り継がれています。
本来、鎮魂歌とは死者の魂を慰めるための宗教音楽です。しかしクロロは、敵の命を奪う「破壊の音」こそが、武闘派だったウボォーギンに相応しい供養だと考えたわけです。
なぜ藤本タツキは「金玉蹴り」にレクイエムを重ねたのか
ここからが『チェンソーマン』の著者、藤本タツキ先生の真骨頂です。
普通、オマージュをするなら、もっと格好いいシーンで使いますよね。強大な魔法を放つ時や、ライバルを圧倒する時など。しかし、藤本先生が選んだのは「動けない敵の股間を全力で蹴る」という、この上なく泥臭く、不恰好なシーンでした。
これには、単なるパロディ以上の意味が込められていると筆者は考えています。
- 「格好良さ」の解体クロロのレクイエムは、どこまでも美学に満ちています。対して、アキとデンジが行ったのは、子供の喧嘩のような仕返しです。でも、死んでしまった姫野先輩が喜ぶのはどちらか? 湿っぽい儀式よりも、バカバカしくて笑えるような、それでいて相手が一番嫌がる復讐ではないか。アキが「格好つけること」を捨て、デンジのペースに巻き込まれたことこそが、彼の救済だったのです。
- 復讐の「低俗化」による救い復讐は本来、自分を削る苦しい行為です。しかし、それを「大会」という遊びに変えることで、アキは復讐の連鎖から一歩外側へ踏み出しました。クロロが「死」を積み上げたのに対し、アキたちは「痛みと笑い」を選んだ。この対比が、作品のテーマである「生きていくことの重さと軽さ」を象徴しています。
アニメ版でさらに際立つ「パロディ」の質感
アニメ版『チェンソーマン』の最終話でも、このシーンは非常に丁寧に描かれました。
映像演出では、アキが足を振り上げる瞬間のスローモーション、そして響き渡る絶叫。どこか荘厳な雰囲気すら漂わせる劇伴(BGM)の使い方は、明らかに『HUNTER×HUNTER』のあの夜を意識した演出と言えるでしょう。
視聴者からは「演出が良すぎて、やってることが金玉蹴りなのが余計に面白い」「これぞチェンソーマン流の鎮魂歌」といった絶賛の声が上がりました。
もし、このシーンの余韻をより高画質で楽しみたい、あるいは原作の細かな描き込みをチェックしたいという方は、fire tv stickなどのデバイスを使って大画面で視聴したり、kindle paperwhiteで電子書籍をじっくり読み返したりするのもおすすめです。
まとめ:受け継がれる「ジャンプイズム」の形
「ウボォーさん、聞こえますか?」というセリフから始まったこの考察。
一見すると、シリアスな名作をギャグに落とし込んだだけのようにも見えますが、その根底には藤本タツキ先生の『HUNTER×HUNTER』への深いリスペクトと、独自の死生観が流れています。
大切な人を失ったとき、私たちはどうやってその穴を埋めるのか。
クロロのように世界を壊すのか。
あるいはアキのように、バカげた方法で笑いに変えるのか。
どちらが正しいというわけではありません。ただ、アキが「鎮魂歌」という言葉を借りたことで、彼の孤独な戦いに少しだけ光が差したことは確かです。
次にあなたが『チェンソーマン』を読み返すときは、ぜひ第5巻を開いてみてください。そして、心の中でそっと呟いてみてください。
「ウボォーさん聞こえますか」はチェンソーマンの何話?元ネタと比較して徹底解説! というこの記事が、あなたの漫画ライフをより深く楽しむ一助になれば幸いです。


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