チェンソーマン 79話 感想:地獄の雪合戦とアキの最期に涙が止まらない

チェンソーマン

『チェンソーマン』を追い続けてきた読者にとって、第79話「キャッチボール」ほど、読み終えたあとに虚脱感に襲われる回は他にないでしょう。

藤本タツキ先生が描く物語は常に予想を裏切ってきますが、この79話に関しては「予想を裏切る」という言葉では足りないほどの衝撃でした。早川アキという一人の男の人生、そしてデンジとの絆が、あんなにも残酷で、それでいてどこか美しい形で決着がつくなんて。

今回は、全読者がトラウマを植え付けられた第79話の魅力を、個人的な感情を爆発させながら振り返っていきたいと思います。


幸せな記憶が「殺戮」に変換される残酷な演出

第79話の最大の特徴は、現実世界での凄惨な殺し合いと、アキの脳内で繰り広げられる「無邪気な雪合戦」の対比です。

アキは「銃の魔人」として、民家を破壊し、人々をなぎ倒しながらデンジに襲いかかります。しかし、アキ本人の精神世界では、幼少期の姿に戻ってデンジと雪合戦を楽しんでいる。この描写の温度差が、読み手の心をこれでもかと締め付けます。

アキが笑顔で投げている雪玉は、現実では街を粉砕する銃弾です。デンジが泣きながら「アキに戻れよ!」と叫び、血を流して耐えている姿は、アキの目には「雪合戦でムキになっている友達」として映っています。

この主観と客観のズレ。アキが幸せを感じれば感じるほど、現実の被害は拡大し、デンジの心は削られていく。これほどまでに悪趣味で、かつ天才的な演出があるでしょうか。

もし手元に単行本がない方は、ぜひチェンソーマン 9巻を手に取って、その圧倒的な構成力を確かめてみてください。

「未来の悪魔」が予言した最悪の最期

以前、未来の悪魔がアキに対して「お前とパワーはデンジの手によって殺される」と予言しました。

私たちはどこかで「そんなことにはならないはずだ」「きっと回避ルートがある」と信じたかった。しかし、物語は非情でした。アキは自分が最も大切に思い、守りたかったデンジの手によって引導を渡されることになります。

アキが「銃の魔人」になった経緯を思い出すと、さらに胸が痛みます。彼は家族を銃の悪魔に殺され、復讐のために生きてきました。それなのに、最終的には自分がその憎むべき対象になり果て、弟分であるデンジに殺されることを選ばされてしまった。

マキマさんの底知れない恐ろしさが、この一件で確定したと言っても過言ではありません。すべては彼女の手のひらの上だったのです。

雪合戦からキャッチボールへ。アキが救われた瞬間

79話の終盤、アキの精神世界に変化が訪れます。

楽しかった雪合戦の最中、アキは泣いているデンジを見て「もうやめよう」と提案します。そして、かつて自分が置いていってしまった弟・タイヨウが現れ、今度は「キャッチボール」を始めようと誘います。

雪合戦は、相手を攻撃し、ぶつけ合う遊びです。

一方でキャッチボールは、相手が取りやすいボールを投げ、相手からのボールを受け止める、双方向の対話です。

家族を失ったあの日、弟を置いて家に戻ったことをずっと後悔していたアキ。彼は死の間際、精神世界の中で弟と再会し、ようやく「奪い合う戦い」から「与え合う対話」へと辿り着いたのかもしれません。

現実のアキの遺体は、デンジのチェンソーに貫かれ、冷たい雪の上に横たわっています。しかし、その死に顔がどこか安らかに見えてしまうのが、この漫画の恐ろしいところです。

デンジが失った「日常」の重み

この戦いで最も傷ついたのは、生き残ってしまったデンジです。

デンジにとってアキは、初めてできた「兄」のような存在でした。ろくに教育も受けず、まともな生活も知らなかったデンジに、食事の仕方を教え、一緒に風呂に入り、同じ屋根の下で暮らしてくれた。

そんなアキを、自分の手で殺さなければならなかった。

しかも、町中の人々が「チェンソーマン!助けて!」と応援する中で、デンジは自分にとってのヒーローではなく、ただの「家族を殺す加害者」としての苦悩を抱えて戦いました。

この瞬間に、これまでの「バカで明るいデンジ」の何かが確実に壊れてしまったのを感じます。


チェンソー マン 79 話 感想:まとめ

『チェンソーマン』第79話は、漫画史に残る屈指の悲劇回であり、最高傑作の回でもあります。

藤本タツキ先生は、読者がキャラクターに愛着を持てば持つほど、その愛着をナイフにして突き立ててくるような作家です。アキというキャラクターが積み上げてきた努力や優しさが、すべてこの雪合戦の演出に収束していく様は、まさに圧巻の一言。

アキの物語はここで終わりましたが、彼が残した「キャッチボール」というキーワードは、その後のデンジの生き方に大きな影響を与えていきます。

まだこの衝撃を体験していない方は、ぜひチェンソーマンを全巻通して読んでみてください。一度読み始めたら、この地獄のような、それでいて目が離せない世界観の虜になるはずです。

さて、アキがいなくなった世界で、デンジはどう立ち向かっていくのか。79話の感想を語り合うと、どうしても湿っぽくなってしまいますが、それだけ私たちが早川アキという男を愛していた証拠なのかもしれませんね。

次はパワーちゃんの運命についても、覚悟を決めて読み進めていこうと思います。

あなたはこの雪合戦、どう感じましたか?


次は、第80話以降の展開やマキマさんの正体について詳しく深掘りしてみましょうか?

コメント

タイトルとURLをコピーしました