『チェンソーマン』という作品を読み解く上で、避けては通れない謎の一つが「眷属(けんぞく)」という存在です。第一部の終盤、支配の悪魔であるマキマが口にした「これらは皆貴方の眷属です」という台詞。あの瞬間に並べられた不気味な悪魔や魔人たちの姿に、背筋が凍るような衝撃を受けたファンも多いのではないでしょうか。
彼らは一体何者なのか。なぜチェンソーマンに従い、そしてなぜバラバラになってしまったのか。今回は、作中に散りばめられたヒントを頼りに、眷属たちの正体や名前の由来、そしてポチタと天使の階級に隠された驚きの繋がりを深く掘り下げていきます。
これを読めば、チェンソーマンという物語が持つ神話的な側面がより鮮明に見えてくるはずです。
マキマが明かした「チェンソーマンの眷属」8体の正体
物語のクライマックス、マキマがチェンソーマン(ポチタ)を復活させた際、その周囲に跪いた8体の存在。彼らこそが、かつて地獄でチェンソーマンと共に戦ったとされる眷属たちです。
まずは、判明しているメンバーを振り返ってみましょう。
- セラフィム昆虫のような頭部と複数の羽を持つ悪魔。言葉を発することはありませんでしたが、その姿はどこか神聖で異様な威圧感を放っていました。
- ケルビム赤子のような顔を持ち、複数の目が特徴的な悪魔。キリスト教における「智天使」の名を冠しています。
- スローン角を持つ異形の姿をした悪魔。「座天使」を由来としており、マキマに呼び出された際も静かに控えていました。
- ドミニオン背中に羽を持つ、人型に近い悪魔。「主天使」の名を持っています。
- ヴァーチュ首から上がない、あるいは頭部が欠落したような姿の悪魔。「力天使」を由来とします。
- パワー(血の魔人)読者にとって最も馴染み深い「パワーちゃん」も、実は眷属の一員でした。彼女の由来は「能天使(パワーズ)」です。
- プリンシ(蜘蛛の悪魔)マキマの忠実な部下として動いていた蜘蛛の悪魔。彼女の名前は「権天使(プリンシパリティーズ)」から来ています。
- エンジェル(天使の悪魔)特異4課のメンバーだった彼も眷属です。名前そのままに「大天使(アークエンジェル)」、あるいは「天使」の階級を示唆しています。
ここに、サメの魔人であるビームが加わります。彼は作中で唯一、地獄時代の記憶を断片的に持っており、チェンソーマンを「チェンソー様」と呼び、狂信的なまでの忠誠心を見せていました。
名前の由来は「天使の階級」!ポチタは神に近い存在?
なぜ彼らの名前は、これほどまでにキリスト教の天使に擬せられているのでしょうか。ここには、原作者・藤本タツキ先生による緻密な設定が隠されています。
神学における天使には「九階級」というランクが存在します。上から順に、熾天使(セラフィム)、智天使(ケルビム)、座天使(スローンズ)、主天使(ドミニオンズ)、力天使(ヴァーチュズ)、能天使(パワーズ)、権天使(プリンシパリティーズ)、大天使(アークエンジェルズ)、そして最下位の天使(エンジェルズ)です。
眷属たちの名前を並べてみると、見事にこの九階級に対応していることがわかります。
- 第1位:セラフィム
- 第2位:ケルビム
- 第3位:スローン
- 第4位:ドミニオン
- 第5位:ヴァーチュ
- 第6位:パワー(パワーズ)
- 第7位:プリンシ(プリンシパリティーズ)
- 第8・9位:エンジェル、ビーム
ここで重要なのは、天使が仕える対象は「神」であるという点です。つまり、彼らを眷属として従えるチェンソーマン(ポチタ)は、悪魔の世界において「神」に等しい、あるいは神そのものを象徴する存在として描かれているのです。
チェンソーは本来、木を切り倒す道具ですが、作中では「悪魔に名前を食べられるとその概念が消滅する」という神のごとき権能を持っています。この圧倒的な力が、天使の名を持つ眷属たちを引き寄せたのかもしれません。
なぜ眷属たちは離れ離れになり記憶を失ったのか
第1部で登場したパワーやビーム、エンジェルたちは、当初自分がチェンソーマンの眷属であるという自覚がほとんどありませんでした。唯一、ビームだけが断片的な記憶を持っていましたが、それも完全なものではありません。
なぜ彼らはバラバラになってしまったのでしょうか。
その鍵は、かつて地獄で繰り広げられた「チェンソーマン vs 四騎士」の戦いにあります。支配、戦争、飢餓、死の「四騎士」と、武器の悪魔たちが連合を組み、チェンソーマンを追い詰めた壮絶な戦い。その乱戦の中で、チェンソーマン側についていた眷属たちも命を落とし、人間界へと転生(輪廻)したと考えられます。
悪魔は死ぬと記憶を失って転生します。パワーがデンジと出会ったとき、ただのワガママな魔人だったのは、地獄での記憶を失っていたからです。マキマだけが彼らの正体を知っていたのは、彼女が「支配の悪魔」として地獄時代の記憶を保持していたからに他なりません。
マキマの目的は、これら散り散りになった「信仰」を再び集め、チェンソーマンという神を自分の管理下に置くことで、理想の世界を作ることでした。眷属を集めることは、彼女にとって儀式のようなものだったのでしょう。
第2部で明かされた「戦争の悪魔」との眷属の違い
物語が第2部へ進むと、眷属という概念に新たな光が当てられました。それが「戦争の悪魔(ヨル)」の存在です。
ヨルは「銃の悪魔」や「戦車の悪魔」を自分の子供、あるいは眷属のようなものとして扱っています。ここで面白い対比が見えてきます。
- チェンソーマンの眷属:天使の階級の名を持ち、自発的な崇拝や絆に近い関係性。
- 戦争の悪魔の眷属:親子のような関係、あるいは能力によって強制的に武器化・使役される関係。
ポチタの眷属たちが「信仰」に基づいているのに対し、ヨルの眷属は「所有」に基づいているように見えます。この違いは、ポチタがいかに特殊な悪魔であるかを際立たせています。
また、第2部でもチェンソーマン 18などの単行本を読むと、新たな悪魔たちが次々と登場しますが、いまだに「かつての眷属」のすべてが再集結したわけではありません。今後、残された階級を冠する悪魔が現れるのか、ファンの間では期待が高まっています。
まとめ:チェンソーマンの眷属を知れば物語がもっと深くなる!
『チェンソーマン』の世界において、眷属とは単なる手下ではなく、ポチタが「神」に近い存在であることを証明する象徴的なキャラクターたちでした。
天使の階級をモチーフにした名前、地獄での凄惨な過去、そしてマキマによる強制的な招集。これらすべての要素が、ポチタという小さな犬のような姿をした悪魔の、底知れない恐ろしさと神々しさを物語っています。
パワーやビームといった愛すべきキャラクターたちが、実は壮大な神話の一部だったと知ると、読み返した時の印象がガラリと変わるはずです。第2部でさらに広がる悪魔たちの系譜からも目が離せません。
**チェンソーマンの眷属とは?正体や名前の由来、ポチタと天使の階級の繋がりを徹底考察!**をお届けしました。この謎多き眷属たちの絆が、いつか再び物語の鍵を握る日が来るのかもしれません。

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